島本理生『ナラタージュ』を読んだ。
今でも呼吸するように思い出す。季節が変わるたび、一緒に歩いた風景や空気を、すれ違う男性に似た面影を探している。それは未練とは少し違う、むしろ穏やかに彼を遠ざけているための作業だ。記憶の中に留め、それを過去だと意識することで現実から切り離している。
──島本理生『ナラタージュ』
僕は新宿駅にある長距離バス乗り場を横切る度に怯えてる。いつかの彼女の面影に怯えてる。それは未練なんて綺麗な代物ではなくて、過去のある瞬間から目を逸らしたことへの罰だ。それを意識したところで贖罪されることはないし、現実は現実のままでしかない。だから僕はこう言わなきゃならないのに言えないままでいる。
「きっと僕は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、僕といるのがキミでもいいと思ったんだ」
You were looking sad. You can't feel the change of seasons.
(訳詞)
哀しげな表情を浮かべる 君は季節の変わり目を感じない。
──CAPTAIN HEDGE HOG『YOU CAN'T FELL THE CHANGE OF SEASONS』
- 作者: 島本理生
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