古川日出男『LOVE』を読んだ。

『LOVE LOVE LOVE』じゃロックンロールは歌えないだろ?

おれは言う。ゼロ地点での演奏会は続いた、と。カナシーがリクエストしたのだ。わずか二回の応答で、それは決定された。
「一曲だけじゃないでしょう?」
「なにが?」
「ロックンロール。自作の」とカナシーが訊いた。
「もちろん」と秋山徳人が答えた。
──古川日出男『LOVE』

そしてフルカワヒデオのロックンロールは続く。品川。白金。目黒。五反田。それぞれの地点で、それぞれのロックンロールが続く。同棲していた男に逃げられたオフィスレディが、高速道路の下で歌うフリーターが、自転車が親友の男の子が、都営バスに乗り続ける女の子が、厨房を持たないシェフが、猫を追いかけるおばあちゃんが、中国マフィアを仕切るチンピラが、その他大勢が、歌う。歌っている。それはくるりのロックンロールと同じで響かない。福島のロックンロールも、京都のロックンロールも、トウキョウには届かない。
トウキョウ生まれメロコア育ちの僕のiPodから聴こえるロックンロールは例えばこんな。

I'm just a band man, not a superstar.
So, I keep showin' up.
Doin' what I'd do.
(訳詞)
僕はただのバンドマンで星なんかじゃないからね
だからステージに上がり続けて僕は僕の歌を歌うだけで
──COMEBACK MY DAUGHTERS『BITE ME』

LOVE

LOVE

Spitting Kisses

Spitting Kisses